2012年2月13日月曜日

緊張感の重要性

成長を目指すチームは新しい血を必要とするものなのだろう。
なぜか。
マンネリ化しないためである。

事実、C教室はマンネリに陥っていた。
少数固定のメンバー。それぞれの事情もあり開始時間をすぎて集まる受講生、与えられたことをこなす受け身の内容、準備不足を許容する雰囲気、先生のスケジュール管理も回を重ねるごとにキレがなくなっている。
慣れによる居心地のよさはあるが、3時間もありながらスピーチ実習が一人一度で終わる状況に違和感も覚えていた。

マンネリ化すると成長にブレーキがかかる。本当に自分は話し方を上達させたいのか。準備不足に対する毎度の後悔。もうここにいるべきではないのだろうか。

そんな中、今日から新しい生徒が二人やってきた。
そして小さな化学変化が起こったように思う。

やはり、自分をよく見せたいという気持ちが生まれるようだ。
余裕を見せたいのか心なしか皆冗長で、実習にはいつにない緊張感もあった。

新しい血のおかげだ。

少数メンバーで実習の機会が多いのも、C教室のよさだと思っていたけど、自分の実習時間が減ってでも、ある程度の人数がいるほうが成長スピードは早いのかもしれない。
誰かが入ってくるにしろ、自分がどこかに入るにしろ、心地よい緊張感のある状況に身を置くのが成長の近道だとあらためて思った。

2012年2月6日月曜日

スロウ・リーディングの効用(プレゼン)

C教室でプレゼン実習を行った。
はじめてのパワポプレゼンとなるはずが、プロジェクターの準備がなく、プリントアウトしたレジュメを配って聞いてもらうことになった。

皆さん、こんにちは。

皆さんは本をもっと早く読みたいと思ったことはありますか?
いわゆる速読というやつです。
書店にはこの速読に関する多くの本が並んでいます。
もっと多くの本を読みたい、もっと多くの知識を身につけたい。
そういう思いは誰にもありますよね。

ただ、そのようにして手に入れた知識は、本当に身になる知識でしょうか。
自分の頭でじっくり考えないまま、丸暗記の知識を詰め込んでいく読書では、しばらくすればすっかり忘れてしまいます。受験勉強を経験した多くの皆さんは、そのことを直感的に知っているのではないでしょうか。

そんな皆さんにオススメしたい本があります。
それがこの『奇跡の教室』です。

ベストセラーにもなりましたし、テレビでも放映されましたのでご存じの方も多いかもしれません。この本は、兵庫県にある灘校で橋本武さんという先生が行った国語の授業を紹介しています。

灘校といえば、東大合格数でトップを争う名門ですが、当時、公立高校の滑り止めだった灘校をそこまで導いたのがこの授業だと言われています。

ではどんな授業か?
それは『銀の匙』という小説、一冊の薄い文庫本を3年かけて読み込むというものです。
教科書は一切使わなかったそうです。このような授業を実現できるのは、中高一貫の灘校が、中高で一つの科目を一人の先生がずっと担当するシステムのおかげでもあります。
結果的に速読とは真逆のスロウリーディングを実践する授業です。
ところで『銀の匙』とはどのような本でしょうか。

『銀の匙』というのは著者・中勘助という作家の自伝的小説で、明治期を過ごした少年時代の思い出を子どもが感じ体験したままに描き出した名作です。夏目漱石は『銀の匙』を「未曾有の作品」と評価しています。
では授業内容に戻ります。

そんな主人公の少年の見聞や感情を追体験していくというのが、授業のひとつの柱です。
例 えば、主人公の少年が伯母さんと『春の七草』摘みをしている場面に出くわすとみんなで七草について深く勉強していく。そして七草がゆを実際に食べてみま す。少年が駄菓子に行けば、その駄菓子屋に並んでいた飴や羊羹を持ってきて食べさせる。主人公が凧を上げたら、美術の先生に頼んで生徒のみんなに凧を作ら せて、上げさせたそうです。
そうやって横道に逸れながら、一冊の本を徹底的に味わい尽くすことで、完全に自分のものにしていきます。二週間で一ページしか進まないこともしょっちゅうだったそうですが、これはもう国語の授業の枠さえ超えた、総合学習のはしりと言えるのではないでしょうか。
橋本先生はこう言っています。

国語は学ぶ力の背骨である。

皆さんは学校の国語の教科書でどんな作品を読んだのか覚えていますか。私はほとんど覚えていません。タイトルはおぼろげながら覚えていたとしても内容はほとんど忘れています。
何かの力になっているのでしょうが、実感としてはないようにも思います。

以上をもって、スロウリーディングで身につくものはこのような能力ではないでしょうか。
1.自分から興味をもつ姿勢
主人公の行動をじっくり追体験したことは、生徒の学ぶ意欲を着実に引き出したと思います。
2.徹底的に調べる力
これは「わからないことは全くない」領域まで、一冊を徹底的に味わい尽くす、その必然として身につく能力ではないでしょうか。
3.気づくセンス
季節の変化にも敏感になりますし、わからないままにしておかないアンテナができたのではないでしょうか。

なかなかじっくり本を読むという時間はとれないかもしれないですが、世の中がより効率を追い求めている時代に、このようなスロウリーディングの効用を教えてくれる本に出合うことは、とても新鮮な体験でした。